はじめに
備長炭 かつては燃料として広く使われていた“炭。”
ガスや電気などの普及により、一般家庭で見かけることは少なくなりましたが、最近では、燃料以外の用途で“炭”が注目を集めています。

有害物質の除去、嫌な臭いの消臭、遠赤外線効果など、炭の効用は実にさまざま。炭は私たちの生活空間をより快適にし、癒しを与えてくれるのです。
知っているようで知らない、炭の意外な素顔を探ってみましょう。

炭の構造がもたらす、不思議な効果
木は炭になると縮んで容積は約10分の1になります。硬く焼き上がった炭の中には、まるで石のような感触のものもあります。ところが、電子顕微鏡で炭の断面を見てみると、縦・横にたくさんの穴が開いているのがわかります。
穴の直径は、細いものではわずか数オングストローム(1オングストローム=1億分の1cm)。炭の中の穴の数はまさに無数と言っていいでしょう。この穴の表面積を合計すると、備長炭1gでなんと約300m2(180畳分)にもなると言います。

そしてこの細い穴は、入ってきたミクロサイズの物質をキャッチします。しかも穴の表面が平らでないため、中に入ってきた物質が引っかかりやすくなっているのです。これが、炭の大きな特徴である吸着作用となります。これをうまく利用すると、空気や水の汚れを吸い取らせることができるのです。

炭の種類により性質もさまざま
炭火焼きやバーベキューの燃料として使われる備長炭は、白炭(しろずみ)という種類です。燃焼速度が遅く、火保ちがいいのが特徴。非常に硬いので表面が崩れにくく、よく洗ったものはつかんでも手が汚れません。断面の光沢はまるで金属のようです。炭同士を打ち合わせると、本当に金属のような音がします。
白炭の原料は、木質が堅く締まっているカシ、ナラ、クリなどブナ科の木材が使われます。炭焼きの工程の最終段階で窯口から空気を送り込み、1000度まで温度を上げます。この時に炭は真っ赤になり、樹皮は燃え尽きます。その後、窯から炭を掻き出し、灰をかぶせて消火すると、表面の白っぽい白炭が出来上がります。

この白炭に比べて、軟らかいのが黒炭(くろずみ)。ナラ、クヌギ、カエデ、ブナ、マツ、スギ、ヒノキなど、色々な木から作られます。断面には大きな穴が多いので空気の通りが良く、火をつけるのは簡単ですが、短時間で燃え尽きるという面もあります。かつては金属の精錬や鍛冶に使われていました。現在も茶道用などの燃料として用いられています。

珍しいものでは、竹で作った竹炭(ちくたん)があります。木炭に比べると吸着作用などはむしろ優れており、実用性では負けていません。竹炭の粉を使った肌着や靴下なども製品化されております。

名称 原料 性質と代表的な炭
白炭 カシ、ナラ、クリなどブナ科の木材(備長炭はウバメガシやアラカシ) 1000度前後の高温処理で作られる。堅くて火保ちが良く、料理の焼き物などに使われる。
●日向備長炭、紀州備長炭、土佐備長炭等
黒炭 ナラ、クヌギ、カエデ、ブナなどの落葉樹。マツなどの針葉樹。スギ、ヒノキなどの間伐財。 窯の中を酸素不足の状態にして消火するので、木の皮が残っている。軟らかく、火がつきやすい。
●池田炭、佐倉炭、岩手切炭等
竹炭 モウソウチク、マダケ 高温で炭化したものは硬く、吸着力が強いので消臭や除湿に向いている。
次回は炭の効果と活用法を掲載予定です。

お楽しみに。



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